今回、皆さん傑作をたくさん撮ることができたのか、例年より多い応募数でとても見応えがありました。
　全体を通した印象としては、作品からそれぞれの作者が何を狙って撮影したのかが伝わるのが多かった気がします。モデルの表情がいいものや光を強調したもの、構図にこだわった作品など、印象に残る作品からは、必ず作者の狙いが伝わってきます。
　ただ、その中で賞から漏れてしまったものは、狙いはいいのに、ほんの少し気配りが足りていないという作品です。背景に余計なものが写っていたり、プリントの調整をやりすぎていたり、わずかな差が入賞と選外を分けてしまうのです。
　また、せっかくロケーションのよい門司港で撮影しているのに、そのよさを生かした作品が少なかったのも気になりました。もちろんモデル撮影ですから、モデルが主体になるのは仕方ないですが、もっと背景に門司港らしさを入れるなどしたら、作品のバリエーションが広がると思います。とても熱気のある撮影会で、当日は曇りから晴れになるなど天候も変わってさまざまなシーンを撮影することができ、私自身も非常に楽しめました。
　どうもありがとうございました。

北九州市長賞   野美　和明「思い」

窓辺に立つモデルの表情が素敵ですね。とても自然な表情で、誰かに想いを馳せているような、さまざまな想像が膨らみます。柔らかな光が全体を包み込む雰囲気もよく、シンプルな構図ながら室内の明かりをポイントに置いたフレーミングも決まっています。全体的におとなしい色合いですが、その落ち着いた雰囲気のよさを引き立てるプリントもお見事でした。派手にしすぎることなく、抑えた色調で、モデルの自然な表情や光の美しさ、この場の空気感がしっかりと表現されています。

北九州観光コンベンション協会賞    黒木　丸生「視線」

魅力的なロケーションを生かしながら、モデルが振り向いた瞬間の最高の笑顔が写し止められています。表情にはピークがあり、わずかにタイミングを外すだけでまったく異なる表情になってしまいますが、この作品はまさにピークの瞬間が切り撮られています。モノクロにした狙いもよく、色をなくしたことで異国を思わせる街灯やアーチ型の建物などの魅力が際立ちました。また、背景のボケ具合も適切で、しっかりとモデルを浮き立たせつつ、適度なボケ味で建物の雰囲気も伝わってきます。

プレミア門司港ホテル賞    大川　とみえ「曜き」

片側から強い光が差しているという、この場の光線状態をうまく利用して作画されました。おそらく露出が難しかったシーンだと思いますが、明部暗部ともにしっかりとディテールを写し、プリントも巧みに仕上げられています。光によって浮かび上がる体のラインが美しく、また、四角い窓が淡々と並ぶ背景も面白いですね。しかも、光を受けて窓枠が輝いているため、非常によいアクセントになっています。周辺を適度に落としながら主役に視線を誘導させるプリント技術も素晴らしいです。

門司港レトロ賞　　高宮　祐二「明暗」

広角レンズを効果的に使い、建物のユニークなフォルムが写し出されています。その先に広がる雲の表情もよかったですね。ただ、この作品の最大のポイントは「明暗」というタイトルです。建物の角をうまく生かし、光の当たる壁の前には黒っぽい着物を着たモデル、影になっている壁の前には白い着物を着たモデルを配した狙いが秀逸でした。建物の光と陰、そしてモデルの黒と白、その２つを組み合わせ、しかもモノクロで撮影したことで、見事に作者ならではの「明暗」が表現されています。